Koguma

自由に生きたい韓国マニアのゆったり生活

韓国フェミニズム本『私は男性で、フェミニストです』を読んでみた。

 

 

こんにちは、そみ(@somi_koguma) です。

 

以前韓国の本屋をぶらぶらしていたとき、タイトルを見て即買いした本がありまして。

 それが今回紹介する『私は男で、フェミニストです』という本。

 

タイトルを見たとき、果たして男性が本当のフェミニストになれるのか?何ができるのか?という以前からうっすらと抱いていた疑問がむくむくと湧き上がってきたんですよね。

 

そして非当事者がどのような過程でフェミニズムに興味を持つようになったのか、フェミニストになった理由が何なのかすごく気になり、迷わず購入しました。

 

f:id:schhms:20200526161248j:image

 

ということで今回は、

 

    ・男性フェミニストの本を読んだことがない
    ・子育てをしている、教育に携わっている
    ・フェミニズムに興味のある男性
    ・恋人やパートナーがフェミニズムに興味を示している

 

こういった方におすすめの韓国エッセイ、『私は男性で、フェミニストです』を紹介し、印象に残った部分も皆さんと共有したいなと思います。

 

※今回紹介する本は韓国語で書かれた本です。

 

スポンサーリンク

 

 

私は男性で、フェミニストです。

 

『私は男性でフェミニストです。』の著者、チェ・スンボムさんは、高校で教鞭をとりながらフェミニストとしても活動しておられる方。

学校では男子高校生に国語を教えておられ、授業にフェミニズムの考え方を盛り込んだり、課題図書にフェミニズム本を取り入れたりと、若い世代の意識改革をしようと奮闘しておられます。

 

f:id:schhms:20200531155720j:plain

 

この本は大きく5章に分かれています。

1章は『母と息子』で、著者がフェミニストになったきっかけである”母”の人生と、女性を取り巻く家父長制について書かれている章。

2章『フェミニズムを勉強する男性』と3章は『先生、もしかして週末、江南駅に行きましたか?』で、韓国社会で起こっているあらゆる女性嫌悪事件について書かれています。

そして4章の『800名の男子学生と一緒に』は、男子高校生に対してどのようにアプローチしているかについて、フェミニズム教育の難しさや学生たちの変化について書かれており、最後の『嫌悪と闘う方法』は、タイトル通り嫌悪と闘う方法について、そして男性フェミニストとしてできることや心構えについて触れられています。

 

最後の付録には、これからフェミニズムを勉強したい方への推薦本が紹介文とともにズラッと。

著者は「男性フェミニストに向けて」と書いていますが、性別関係なくフェミニズムに興味がある方ならどれも読んでおきたい本ばかりでした。

 

f:id:schhms:20200531155457j:image

 

ではここからは、印象に残った部分を紹介していきたいと思います。

  

フェミニストになったきっかけ

 

第1章には家父長制の中で苦しむ母親、妹、叔母の様子が書かれています。

著者の周りの女性が家庭内に閉じ込められ、自由や選択肢を失っていく様子は、『82年生まれ、キム・ジヨン』や『ヒョンナムオッパへ:韓国フェミニズム小説集』の中に出てくる女性とも非常に似ていました。

 

女性という理由だけで子育てや家事は当たり前のこととされ、仕事のキャリアを絶たれ、子育ての途中に少し休んでいるだけでママ虫と言われる。

一方、父親は少し家事をしただけで、少し子供の面倒を見ただけで、すぐにイクメンと言われる。家庭にお金さえいれれば立派な父親と言われる。

著者は幼い頃からそんな自身の母の姿とそれを取り巻く家父長制に、小さな違和感を抱きながら育ちます。

 

"지금 생각해보면 그때가 '페미니즘 사고'의 시작이었던 것 같다."

引用: 저는 남자고 페미니스트입니다. P27

以下、私が意訳した文です。 

(今から思えば、この時がフェミニズム思考の始まりだったのだと思う。)

 

우리가 누리는 평화롭고 안락한 삶의 이면에는 끝나지 않는 고통을 인내하는 다른 누군가가 있었다.

引用: 저는 남자고 페미니스트입니다. P27

 以下、私が意訳した文です。 

(私たちが享受している平和で居心地のいい暮らしの裏には、終わりのない苦痛に耐えている誰かの存在があった。)

 

f:id:schhms:20200531155526j:image

ーーーーーーーーーーー 

成長とともに、他の男性と同じように女性の体を評価し、男らしさを磨くようになる著者ですが、それでもずっと母の人生への違和感が心に残ったまま。

そして大学のフェミニズム学会で勉強する男性の後輩の言葉をきっかけに、「自分はフェミニストだ」と宣言するようになります。

 

스물한 살이었다. 페미니즘 학회에서 공부하는 남자 후배에게 물었다.

”남자가 왜 페미니즘을 공부해?”

내 질문에 싱긋 웃으며 대답하던 그의 표정, 목소리, 주변 풍경이 아직도 눈에 선하다.충격이었다.

"남자니까 잘 모르잖아요, 배워야죠."

 引用: 저는 남자고 페미니스트입니다. P5

以下、私が意訳した文です。 

(21歳のときのことだった。私はフェミニズム学会で勉強する後輩男子に訊ねた。 

”どうして男がフェミニズムを勉強してるの?”

私の質問ににこっと微笑みながら答えた彼の表情、声、周りの風景が今も目に焼き付いている。

”男だからよくわからないじゃないですか。だから学ばなきゃ。”)

 

数百人の男子高校生の意識を変える

 

ーーーーーーーーーーー 

その後、男性フェミニストとして生きることを決意した著者は、高校の国語教員になります。

そこで2000年代生まれの男子学生たちの男らしさを表現する方式が”おじさん””おじいさん”と全く変わっていないことに気付きます。

 

나는 우리 남학생들이 따뜻하고 성숙한 사람으로 성장하면 좋겠다. 적어도 ' 꼰대 ' 나 ' 개저씨 ' 소리는 듣지 않기를 바란다.

引用: 저는 남자고 페미니스트입니다. P139

以下、私が意訳した文です。 

(私は男子学生たちが温かく成熟した人に成長してほしいと願う。少なくとも' 老害 'や'ケジョッシ' といった言葉を言われないことを願う。)

 

ーーーーーーーーーーー 

そんな彼らにフェミニズム教育をしようとするのですが、初めは生徒達の反感を買ってしまい、あまりの難しさに一度は沈黙することを選んでしまう著者。

 

しかし、2016年に起きた江南駅殺人事件とその事件への男性達の反応をきっかけに、”沈黙=構造的な加害者”だと気づき、学生たちへのフェミニズム教育を再開します。

 

침묵하지 않기로 했다. 무엇을 할 수 있을지 고민했다.

일회성으로 끝나지 않고 긴 호흡으로 계속할 수 있는 무엇이 필요하다고 생각했다.

引用: 저는 남자고 페미니스트입니다. P107

以下、私が意訳した文です。 

(沈黙しないことにした。自分に何ができるか悩んだ。

一回で終わるものではなく、長く続けられる何かが必要だと思った。)

 

ーーーーーーーーーーー  

1度真正面からフェミニズムを語って生徒たちの反感を買ってしまった著者は、遠回しにフェミニズム的な思考を育てていく方式に変えていきます。

国語の教科書に必ず出てくる『春香伝』や『蕎麦の花が咲く頃』といった作品を通して生徒たちと議論を交わしたりと、授業の内容から大きく離れないよう、関連づけて生徒に問題意識をもたせる著者。

教育者として試行錯誤する姿や、学生たちが少しずつ変化する姿からは、ジェンダー教育の望ましい姿と小さな希望が見えました。

 

f:id:schhms:20200531155648j:image

 

スポンサーリンク

 

 

 

男性はフェミニストになれるのか

 

冒頭にも書きましたが、私は「果たして男性もフェミニストになれるのか?」とずっと疑問に思ってきました。

それでいろんなフェミニストの方のインタビューを聞いたりブログを読んだりして調査したのですが、人によっては「男性は当事者じゃないから本当の苦しみや痛みを知らない」「すでに既得権を享受しているからそれを手放すはずがない」「女性に褒められるために、ファッションのような感覚でフェミニストと名乗っている人もいる」といった否定的な意見も多く見られました。

 

著者も一部の男性から「女性にモテるためにフェミニストと名乗ってるんでしょ?」と言われ一部の女性から「フェミニストなの?かっこいい!」と言われ、たびたび自問自答を繰り返したんだとか。

 

f:id:schhms:20200531155607j:image

 

男性フェミニストにできること

 

じゃあ男性はフェミニストになれないのかというとそうではなくて、男性にもできる活動があると著者は言います。

 

페미니즘은 여성 인권 운동이다. 당사자인 여성이 주체가 되는 것이 바람직하다. 남성 페미니스트는 자신을 협력자로 정체화하고 여성이 하기 힘든 역할을 보조적으로 수행하는 것이 효과적이다.

 

남성 페미니스트로서 기능하고 싶다면 일상의 최전선에서 남성들과 대화하자. 내 가치는 그곳에서 빛난다.

引用: 저는 남자고 페미니스트입니다. P136

以下、私が意訳した文です。  

(フェミニズムは女性人権運動だ。当事者である女性が主体になるのが望ましい。男性フェミニストは協力者となり、女性にとって大変な役割を補助的に行うのが効果的だ。

男性フェミニストとしての役割を発揮したいのなら、日常の最前線で男性たちと対話しよう。そこで僕たちの価値が光るのだ。)

 

f:id:schhms:20200531155613j:image

 

ーーーーーーーーーーー  

著者も言っているように、当事者ではない男性がフェミニストとして活動するにあたっては、いくつか注意点がありますよね。

女性が握るマイクを奪わないこと、男性の声が女性の声より大きくならないこと、そして女性に向けて話すのではなくて、男性グループに向けて話すこと、伝えること。

 

皮肉にもホモソーシャルの中では、女性に言われるより同性に言われるほうが耳を傾ける人が多いものです。

だから男性フェミニストにできることは、男性側の意識を変えることなんですよね。

男性達に向かってフェミニズムを語ることほど難しいことはないですし、最悪、男性の勲章が剥奪される危険性だってあるわけです。

でもそこまでできなければ男性はフェミニストと名乗ってはいけないんじゃないかなと思います。

 

また、今まで享受してきた既得権を認識し、反省すること。

個人は差別をしていなくても、構造的に差別に加担していたことを自覚することも必要な過程だと思います。

 

「へえ、フェミニズム勉強してるんだ!女性の側に立てるなんて素敵!」なんて言葉を聞くために、入っちゃいけない分野です。

配慮できる男、女性に優しい男をアピールするツールじゃない。

フェミニズムは女性にとって、ファッションでもないしお遊びでもないんですよね。命・人生に関わることです。

 

だからそういうことを踏まえた上で、自分たちに何ができるかを考えるべきではないかと。

 

男性フェミニストの入門書としても

 

ここまで著者の経験談、活動のお話を中心に紹介してきましたが、他にも、統計を元に韓国女性の暮らしの実態が解説されていたり、ここ数年に起きた事件について書かれていたりと、韓国フェミニズムに興味がある方なら誰でも勉強になる内容になっていました。

 

男性にも女性にも、そしてそれ以外の性別の人にも幅広く読まれるべき本ではありますが、やはり筆者は”男性のフェミニズム入門書”になればという思いが強いようですね。

本の末尾には”男性フェミニストのためのカリキュラム”というタイトルで、カテゴリー別にフェミニズム参考本が紹介されていました。

 

参考本の細かな説明はもちろんのこと、男性が抱きやすい感情や疑問、やりがちなミスなども丁寧に書かれているのが印象的でした。

 

f:id:schhms:20200601142259j:image

 

私がまだ知らないだけかもしれませんが、ここまで徹底して書かれた、男性によるフェミニズム本は読んだことがないなと...。

 

 

これは同じ問題を抱えている日本でも出版されるべきだし、多くの人に読んでほしい1冊。翻訳家、出版社の方々、どうかこの本を日本でも出してください...!

 

f:id:schhms:20200531155720j:image

 

★★★

 

ということで今回は、『私は男で、フェミニストです』の紹介でした。

他にも書きたいことや紹介したい部分がたくさんあるのですが、めちゃくちゃ長くなってしまいそうなのでこれくらいにしておきます笑

 

    ・男性フェミニストの本を読んだことがない
    ・子育てをしている、教育に携わっている
    ・フェミニズムに興味のある男性
    ・恋人やパートナーがフェミニズムに興味を示している

 

こういった方は是非読んでみてくださいね。

 

韓国語 女性学 『私は男で、フェミニストです』 著:チェ・スンボム
by カエレバ

 

スポンサーリンク

 

 

関連記事