韓国エッセイ 『말하기를 말하기 (話すことを話す)』から学ぶ、知性のある話し方。

※本ページにはプロモーションが含まれています

 

こんにちは、そみ(@somi_koguma) です。

 

私は昔から話すことにあまり自信がない人でして。

おそらく頭の中でぐるぐる考えた後、ぽつりぽつりと話始めるタイプなので、瞬発力が求められる会話では置いていかれることが多いんですよね。

だから学生時代は弁が立つ人に任せて、私はぼーっと聞いてるなんてことが多かった気がします。

 

まあ学生時代は話したいときに話したい人だけと話せばよかったのですが、仕事を初めてからは、毎日いろんな国、年代の人と話さなきゃいけないようになって、自分の話し方や声の出し方を意識することが増えてきました。

自分なりに練習した結果、相手への質問の仕方や相槌を打つタイミングも人並みにできるようになり、ここぞというときは自分の意見を主張したりできるようになったわけですが、それでもまだ苦手意識がこびりついている感じはあります。

  

で、そんなところに、私の尊敬する作家さんであるキム・ハナさんが新刊を出されたというニュースが入ってきまして。

タイトルを見た瞬間「いま私が求めている本だ!」と思い即購入。

 

それが今回紹介する『 話すことを話す - 正しく話すために』です。 

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”何気ない発話”という無意識の領域をやさしく刺激してくれるエッセイで、

 

・話すことに自信がない

・たくさん話さなければいけない仕事をしている

・日頃の何気ない会話を見直したい

 

といった方におすすめできる1冊でした。

 

今回も本の紹介と著者の紹介、印象に残った文章などなどを皆さんに共有したいと思います。

 

※今回紹介するのは韓国語で書かれた本です。

 

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말하기를 말하기 (話すことを話す)

 

タイトルだけを見ると話し方のテクニック本なのかと思ってしまいますが、ただのテクニック本というよりは話すことをめぐる著者の経験談や気づき、話すことの魅力や正しく声をあげることの大切さについて書かれた1冊でした。

  

本書の前半は主に、幼少期〜会社員時代の著者の経験談が書かれており、中盤〜後半にかけてはフリーのお仕事(物書き、ポッドキャストの進行役、講演など)の経験談を元に、発話することやコミュニケーションについて著者が考えたことが書かれています。

 

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アナウンサーや声優といった特別な仕事に携わる人は例外ですが、ほとんどの人は”話すこと”を誰かに習ったり、日頃の話し方について深く考えることはあまりなかったりします。

プレゼンや面接の前はトーンや使う語彙を一言一句確認しても、気の許せる友人や恋人、家族と話すときの声の出し方や相槌にまで強い意識を向ける人は少なく、毎日使う大切なツールなのにも関わらず、生まれたときから今まで無意識に使っていることがほとんどだったりしますよね。

 

この本はそういった無意識の部分に気づかせてくれ、普段の何気ない会話を省みるきっかけになる1冊でした。

 

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では、ここからは印象に残った文章をいくつかピックアップしたいなと。

 

良質な会話のために考えること

 

쉽지 않은 일이지만, 어색한 느낌을 이기고 나의 목소리와 말투, 대화 내용을 그야말로 '남 말하듯이' 들어야 한다.

引用:『말하기를 말하기 (話すことを話す)』김하나 p104

  以下、私が意訳した文です。 

(ぎこちない感覚に耐えるのは簡単なことではないが、自身の声や話し方や会話の内容を、”他人が話している”と思って聞くべきだ。) 

 

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何かの機会で自分が話している姿を見たり聞いたりし、ショックをうけた....なんてこと結構ありますよね。 

私も仕事のときに会話を録音したり録画しなきゃいけないことがあるんですが、あとで見返すともうため息しか出ないんですよね(笑)こんな話し方、身振り手振りを毎日人に晒しているのか、と。

 

著者も今となっては話すプロですが、昔は極度の人見知りだったり、相槌が多すぎたり同じ言葉ばかり繰り返したりしていたらしく、長い時間をかけて少しずつ話し方を改善していったそうです。

 

この本の中には、そういった改善の過程や相手を配慮しながら話すコツが細かく紹介されていて、まだまだ話すことが苦手な私にとって役立つ情報が満載でした。

 

また「私も極度の人見知りだったけど、今では話すことが生業になっている。いくら口ベタな人でも、試行錯誤を繰り返せば、話す力は必ず伸びる!」と断言なさっていて、私にも改善の余地はまだあるのかと励まされたり。


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女性たちへ: 私たちには謙遜しないくてもいい権利がある

 

우리는 겸손을 미덕이라고 배웠고 그것은 분명 맞는 말이겠으나, 본인의 성과를 정당하게 인정받지조차 못 할 때면 꼭 미덕만은 아니다. 남성 주도의 시스템 안에서 여성의 역할과 성과는 너무도 쉽게 잊히거나 평가절하된다.
引用:『말하기를 말하기 (話すことを話す)』김하나 p146

 以下、私が意訳した文です。  

(私たちは謙遜を美徳だと学んできた。確かにそれは間違ってはいないが、本人の成果までも正当に認められないのは、美徳とはいえない。男性が主導する社会システムの中で、女性の役割と成果は簡単に忘却され、価値を下げられてしまう。)

 

나는 마이크 앞에 선 여자가 더 많이 보여야 한다고 생각한다. 약자,소수자,장애인,청소년,질병을 앓는 사람들의 목소리가 더 많이 들려야 한다고 생각한다. 내게 주어진 마이크들을 더 잘 활용해야겠다는 생각이 든다.그러기 위해서 더 많이 읽고 쓰고 들어야겠지. 내게 마이크가 있는 한, 아니 없다면 만들어서라도, 더 많이 말하고 더 다양한 목소리를 듣고 싶다. 지금까지 들리지 않았던 수많은 목소리들에게 마이크를 건네고 싶다.

 

引用:『말하기를 말하기 (話すことを話す)』김하나 p205

 以下、私が意訳した文です。 

(私はマイクの前に立つ女性がもっと多くの人の目に映らなければいけないと思う。弱者、マイノリティー、障がい者、若者、疾病を患っている人達などの声が多くの人の耳に届くべきだと思う。だから私は自身に与えられたマイクをさらに活用しなければという思いがある。そのためには更にたくさん読み、書き、聞かなければいけないだろう、私の元にマイクがある限り、いや、無いのなら作ってでも、もっとたくさん話し多様な声を聞きたい。今まで聞こえてこなかった数多くの声にマイクをパスしたい。)

  

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冒頭に話すのが苦手だと書きましたが、その要因のひとつに、みんなが黙っている中で私ひとりが話してもいいのか?話すに値する内容か?出しゃばりだと思われないか?という過剰な遠慮の気持ちもあるなと思っていて。

 

特に女性の場合、出しゃばるな、おしとやかにという無言の圧力を受けることがあり、褒められたときに「そんなことないですよ」「いえ、まだまだです」といった謙遜の言葉を条件反射的に言ってしまうのもそれが自分を守る術だったりします。

 

それに対して著者は、女性には謙遜しなくてもいい権利があると。

これは私もフェミニズムを学ぶ中で思うことでして。

女性らしさ=控えめ、謙遜するといったイメージを内面化しちゃってる人がすっごく多いんですよね、私も含めて。

でもそれは褒めた側も褒められた側も、何だ心地よくないと思いますし、自分が努力して上げた成果くらい「ありがとうございます!」と自信をもって言いたいところ。

 

はじめは抵抗感があるかもしれないけど、堂々と「ありがとうございます」が言えるようになるって周囲だけでなく自分自身にも大きい影響を与えると思うんです。

 

自分が発した言葉は同時に自分の耳にも入ってきますからね...

毎日の会話の中から、自らの価値を下げる発言をひとつずつ取り除いていきたいなと思いました。


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知性のある話し方

 

듣고, 그 순간에 있기

잘 들어야만 잘 말할 수 있다. 잘 들어야만 미묘하게 상승하는 대화의 호흡과 리듬을 감지할 수 있고, 그것을 더 끌어올리거나 식힐 수도 있다. 그리고 무엇보다도, 잘 들어야만 '그 순간'에 있을 수 있다.

 

引用:『말하기를 말하기 (話すことを話す)』김하나 P114,115

 以下、私が意訳した文です。 

 (相手の話をちゃんと聞いてこそ、ちゃんと話すことができる。相手の話をちゃんと聞いてこそ、微かに上昇する会話の呼吸やリズムを感知することができ、それをさらに引っぱり上げたり、クールダウンさせたりできる。そして何よりも、ちゃんと聞いてこそ、”その瞬間”にいることができるのだ。)

 

나는 21세기의 지성이란 스스러의 말이 여성, 약자, 소수자, 장애인 들을 소외시키지는 않는지 점검할 수 있는 능력을 포함한다고 생각한다. 나아가서는 지구의 모든 생명과 지속 가능성을 위해 더 나은 표현을 고를 수 있는 능력도.

引用:『말하기를 말하기 (話すことを話す)』김하나 p191

 以下、私が意訳した文です。  

 (私は21世紀の知性とは、自身の言葉が女性、弱者、マイノリティー、障がい者達を疎外していないか点検できる能力も含んでいると思う。ひいては、地球の全ての生命との持続可能性のために、よりよい表現を選べる能力も必要だと思う。)

 

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この本は話すことについて書かれていますが、話すことを考える=自身の人生を考えること、につながるので、これは人生を探索するエッセイだなあと思いながら読んでいました。

価値観、立場、人生の方向性などは、いくら隠していても自然に言葉に表れるものだし、何気ない一言で相手がどういう人なのかがわかったりしますよね。

 

”言葉=自身の人生が反映されたもの”という、ついつい忘れてしまいそうな事実を意識しなきゃいけないなと何度も思いました。

 

この本を読んでいっぱい反省しましたが、かといって話すことに恐怖を抱くのではなく、時に失敗しながらもよりよい声の出し方、周りとの関わり方を探求していけたらなと思います。

そして少しずつ、著者が言う”21世紀の知性”を兼ね備えた大人になっていきたいものです。


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作家キム・ハナさん

 

では最後に筆者の紹介を少し。

 

著者のキム・ハナさんは、私が好きな韓国の作家さんのひとりでして。

以前はコピーライターとして活躍なさっていて、現在は作家、ポッドキャストの進行役、講演など様々なお仕事をなさっています。

 

著者自身、幼い頃から極度の人見知りだったそうで(今の堂々とお話しされている姿からは想像できない!)、まさか自分が話すことに関する本を書くことになるとは思ってもいなかったんだとか。

 

話しのプロと言われていることもあり、相手への質問の仕方、相槌のタイミング、ユーモアの使い方、どれをとっても非の打ちどころがないのですが、彼女の数々のエピソードを読んでいると話すスキルは一朝一夕に伸びるものではないのだなと、日々の鍛錬の必要性を感じたり。

側から見たら生まれ持って才能がありそうな人も、表に見えている部分だけで羨ましがったりしちゃいけないなと、彼女のエピソードを知り改めて思いました。

 

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著者の肩書きは、”읽고 쓰고 듣고 말하는 사람(読んで、書いて、聞いて、話す人)”でして。

「この順番が大事で、最後に”話すこと”が来るのがモットーだ」と仰っていることからも、彼女の人生への姿勢、人と会話をする際の姿勢が垣間見えます。

 

我が先に!と常に焦っていると、ついつい話すことが先にきてしまいますが、読んだり書いたり聞いたりしないことには、ちゃんとした会話ってできないですよね。

発言権を獲得する前に、まずは相手の話をしっかり丁寧に聞くこと。

それでこそちゃんとした会話が成り立つし、相手との信頼関係も構築できますよね。

ふう、何度も何度も繰り返して自分に言い聞かせないと。

 

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ちなみに著者のポッドキャスト<책읽아웃:김하나의 측면돌파>は毎回欠かさず聞いている大好きなチャンネルでして。

多様なテーマを扱った作家さんとのブックトークは、本好き、韓国社会に興味のある私にとって学ぶ点がてんこ盛りで、いつもメモ片手に集中力MAXで聞いています。

 

著者の落ち着いた知性のある話し方、語彙力、話すテンポ、相槌の量などを見ていると、相当努力なさったんだろうなあと感心しますし、私も話すスキルを磨き、知性のある話し方ができるようになりたいなと刺激を受けています。

 

キム・ハナさんのsnsやポッドキャストのリンクなどもこちらに載せておくので、合わせてチェックしてみてください。

 

 

また、キム・ハナさんは以前当ブログでも紹介したエッセイ、『女二人で暮らしてます 』- 一人暮らしでも結婚でもない、ユニット家族の誕生』 の著者の一人でもあります。

女友達2人で家を買い、時に衝突しながら心地よい生活、関係を築いていく..という話のエッセイです。こちらもすごく面白い本なので、興味のある方は是非読んでみてくださいね。 

 

★★★

ということで今回は『 話すことを話す - 正しく話すために』の紹介でした!

 

ああ、はやく邦訳版もでないかなあと心待ちにしているのですが...今は何の情報もないですね(涙)

 

実は以前、Instagramでキム・ハナさんにメッセージを送る機会があったんですが、そのときに「日本での出版も期待しています!!!」と鼻息荒めに伝えておきました(笑)

「私も日本で出版できることを願っています」とのお返事が返ってきたので、、、あとは待つのみですね。

いつになるかわかりませんが、彼女の声が韓国だけに留まらず日本や他の国にも広がれればいいなと思っています。

 

韓国語がわかる方は是非とも読んでみてくださいね。おすすめです!

 

 

 

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