どうも、そみ(@somi_koguma) です。
私は昔から、物をあまり買ってもらえない家庭で育ちまして。
友達が最新のゲームを買ってもらっているのを見て、クリスマス前に必死に親にプレゼンしたけど、結局朝ベッドの横にあったのは絵本だったり、欲しいものがあっても数か月我慢させられて、やっと買ってもらえたときは嬉しさのあまり毎晩枕元に置いて寝たり。
今でも小学生のときに買ってもらったポケットサイズのゲームを大事に保管しているのですが、それ見ると、買ってもらった瞬間、おもちゃ売り場の空気感、その時の気分、喜んでる私に1日30分までだよと言った母の声、すべてがぶわーっとよみがえります。
自分で生計を立てられるようになった今でも一つの物を長く大切に、愛着を持って使う習慣は体に染み付いていて、私の生活のルールのひとつになっています。
最近読んだ韓国エッセイ 『モノから学びます』 - 今日がすてきになる魔法 も、そういった物への愛着や学んだことなど、物にまつわるエピソードが書かれた1冊でして。
大好きな出版社から新しく出たエッセイということもあって、刊行とほぼ同時に注文しました。
※今回紹介するのは韓国語で書かれた本です。
追記:日本語版も発売されました。
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モノから学びます-今日がすてきになる魔法
『モノから学びます』 - 今日がすてきになる魔法は、筆者が身の回りにある物にフォーカスし、それにまつわるエピソードや学んだことについて書いた日常エッセイ。
言葉を発しない存在が時に自分を映す鏡となり、人生のヒントを教えてくれる。そんな瞬間をイラストレーターでありエッセイストでもある著者が丁寧に収集し、可愛らしいイラストと心が温かくなる文章でつづっています。
本書は全6章、44つのエピソードからなっています。
どの章も、ある物がきっかけで人生や日常がより豊かになる瞬間を捉えたエピソードで構成されていて、著者の物を見つめる柔軟な視線、感性、表現力には、日々の小さい変化や幸せを見逃さないためのヒントがたくさん隠されていました。
玉ねぎから再スタートへのヒントを得たり、スイカから母親の愛情を汲み取ったり、誕生日ケーキのロウソクやバスの下車ボタンからどんな大人になりたいか想像を膨らませたり、引っ越しを繰り返す自分のライフスタイルをポストイットに例えたり.....著者イム・ジナさんはとっても想像豊かで視線の向く先が素敵な方でした。
この本の冒頭に、この本を開いた瞬間からあなたの周りの物があなたに魔法をかけます。と書いてあったんですが、最後まで読んでみてその言葉に納得。
物の中に保管されていた誰かとの思い出、自分との思い出、忙しさと必死さですっかり忘れていたことを、物が生きているかのように語りかけてくる。読むとそんな感覚になるエッセイです。
著者 イム・ジナさん
最初の数ページを読んだところで著者への興味がムクムク湧いてきたので、ひとまず本を閉じてInstagramやNaverでリサーチをしたのですが、著者のエッセイを以前にも読んだことがあることに気付きました。
それがこの『パンを選ぶように生きたい』というエッセイ。
そういや以前韓国で読んだなあと写真を探してみたら、あった!
どうりでイラストに見覚えがあるわけだ。
イム・ジナさんの本業はイラストレーターだと思うのですが、今までにも2冊のエッセイ本を刊行されているので、エッセイストとしても活発に活動なさっている模様。
日本でもお仕事をなさっているようで、エッセイの中には日本でのエピソードもいくつか登場していました。
ちなみにこの本を読んで彼女の文とイラストに惚れちゃいまして、2021の日めくりカレンダーも買っちゃいました。2021年は毎日イム・ジナさんの言葉とイラストに慰めてもらいます。
出版社 자기만에 방(自分だけの部屋)
またこのエッセイは자기만에 방(自分だけの部屋)という私が大好きな出版社から出ているのですが、この出版社の本を買うと、いつもこのようなお知らせの紙が入っています。
私はこういう小さいコラムにとても弱いのです。
ちなみに以前紹介した『無理のない範囲で』も자기만에 방(自分だけの部屋)から出ています。
この出版社から出てる本は、可愛らしいイラストと日常の何気ないエピソードをつづったものが多い印象。
今の韓国エッセイブームの波に乗って、この出版社からも邦訳版が出てくれたらいいなあ。
ではここからは印象深かった部分をピックアップ!
モノを通して自分を見つめる
나와 혹은 타인과의 경험만으로는 배울 수 없는 것투성이입니다. (中略) 말이 없는 대상의 말을 듣고 배우는 마음을 갖는다는 건, 생활의 단면이 조금씩 너그러워지는 일.
引用:『モノから学びます』イム・ジナ著 P6-7
以下、私が意訳した文です。
(自分の経験、または他人との経験だけでは学べないことがたくさんあります。言葉を発さない対象の言葉を聞き、学ぼうとする心を持つことで、生活の断面が少しずつ広くなっていきます。)
잊지 말아야 합니다. 매일 사물에게서 도움을 받고, 사물 안에 나의 이야기를 수납해둔다는 사실을요.
매일의 과정을 사물을 통해 들여다보고 싶습니다.
引用:『モノから学びます』イム・ジナ著p8
以下、私が意訳した文です。
(忘れてはいけません。毎日モノに助けてもらい、モノに自分のストーリーを収納させてもらっている事実を。
私は日々の過程を、モノを通して覗いてみたいのです。)
私のことが好きになる"物"
한여름 밤 더워서 깼을 때 이불 위에서 잡히던 에어컨 리모컨, 여행 파우치에 넣은 면봉, 지난 여해에서 쓰지 않고 남긴 외화 지폐, 크기별로 썰어 냉동실에 얼려둔 대파
引用:『モノから学びます』イム・ジナ著p28
以下、私が意訳した文です。
(真夏の夜、暑くて目が覚めた時に掴んだ布団の上のエアコンのリモコン、旅行ポーチに入れた綿棒、前回の旅行で残った外貨紙幣、大きさ別に切って冷凍庫で凍らせておいた長ネギ)
나는 심플라이프를 살고 있지 않고 미니멀리스트와도 멀어져가고 있지만, 지키고 싶은 무언가가 매일 조금씩 뚜렷해지는 생활 방식을 꾸려나가고 있다. 마음에 드는 생활이 눈에 잘 보이는 매일을 살다 보면, 우울감이 찾아오는 입구가 좁아진다고 믿고 있다.
引用:『モノから学びます』イム・ジナ著 P62
以下、私が意訳した文です。
(私の生活はシンプルライフやミニマリストとも距離があるが、守りたいことが毎日少しずつ鮮明になっていくようなライフスタイルを送っている。自分の心にグッとくる生活を毎日送っていれば、憂鬱さが入ってくる入口が狭くなるのではないかと信じている。)
モノを通じて人を感じる
생활 속의 사소한 행동들에서 이제는 곁에 없는 사람의 이야기가 아주 잠깐 고개를 내밀다가 사라진다.
가위나 칼을 사용한 후에는 아주 잠깐 할머니가 내 곁에 온다. 어릴 때 부엌에서 칼을 쓰고 식탁에 올려두자 할머니가 슬며시 입을 열었던 그때 그대로의 분위기로 찾아온다.
引用:『モノから学びます』イム・ジナ著 p40
以下、私が意訳した文です。
(生活の中の些細な行動に、今はもうそばに居ない人のストーリーがひょこっと現れてはすぐに消えてしまうことがある。ハサミや包丁を使った後は、ほんの一瞬、祖母が私のそばにやって来る。幼い頃、祖母は私が包丁をそのまま食卓に置いているのを見ると、そっと注意をしにきた。今もあの頃と全く同じ雰囲気で私の元にやってくる。)
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小学生の頃の夏休み。私が朝起きてすぐに海に入れるようにいつも大量の浮き輪を早朝から膨らましてくれていた祖父。その浮き輪の色とゴム特有の匂い、ポンプを懸命に押す祖父のゴツゴツとした足。
川沿いで百合鴎にパンをあげられるよう、近所中のパン屋さんからパンの耳を集めてくれていた祖母。袋いっぱいに入ったパンの匂いと、少し湿気を含んだ匂いと、祖母の「これだけの量があれば満足だろう!どうだ!」という表情。
筆者のモノにまつわるたくさんのエピソードを読んで、私も今はそばにいない祖父母との思い出の物が頭にポンポンと浮かびました。
今でも実家の倉庫にある浮き輪や、サンドイッチを作るために切り落としたパンの耳を見ると、祖父母がそばにいるような気がするんですよね。
あるモノを目にした瞬間、完全に忘れていた記憶が、奥深くにしまっておいた記憶が、一瞬でよみがえる。本当に不思議です。
去った人への思いが強ければ強いほど、残されたモノは時に残酷な存在になるけれど、モノが残っていてよかった、そこに温もりを帯びたストーリーが収納されていてよかったと思うこともあったり。
人との距離が遠くなり、家にいる時間が長くなっている今だからこそ、改めて身の回りの物を通して普段の生活や人生を振り返ってみようかなと思える1冊でした。
★★★
ということで今回は韓国エッセイ 『モノから学びます』 - 今日がすてきになる魔法 の紹介でした。
生活の些細なお話がお好きな方におすすめしたいエッセイです。
是非休みの日にベッドに寝転びながら読んでみてくださいね。
日本語版▼
ではっ!
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