チョンセランさんの初エッセイ『地球人ほど地球を愛することはできない』を読んでみました。

 

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こんにちは、そみ(@somi_koguma) です。

 

先日読み終えた韓国エッセイ『地球人ほど地球を愛すことはできない

実は昨年の6月頃に手元にやってきたのですが、大好きなセランさんのエッセイということで大切に少しずつ読み進めていたので、ブログで紹介するのが遅くなりました。

 

今回もいつものように本の簡単な内容紹介、印象に残った文章などを記録していきたいと思います。

 

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※今回紹介するのは韓国語で書かれた本です。

 

 

地球人ほど地球を愛することはできない

 

今回紹介する『지구인만큼 지구를 사랑할 순 없어 (地球人ほど地球を愛すことはできない』は、『フィフティ・ピープル』や『保健室のアン・ウニョン先生 』などの作品で知られる韓国の小説家、チョン・セランさんの初となる旅エッセイです。

 

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旅先はニューヨーク、アーヘン、大阪、台湾、ロンドンで、旅のエピソードはもちろんのこと、セランさんの幼少期の話や小説家になる前の話、友人達とのエピソードも織り込まれていて、ファンなら必読だなと思いました。

 

「ああ、この経験があの作品に影響を与えたのか....!」「作品作りの原点はここにあるのだな」とふるえた瞬間が幾度もありましたし、フィフティ・ピープルにあった「この世が崩れ落ちてしまわないように包んでいてくれるのは、何気なくすれ違う人々をつなぐ、ゆるやかで透明な網だと思います」という言葉が何度も頭に浮かぶエッセイでした。

 

セランさんの目を向ける先や、多くの人が通り過ぎてしまうようなものを大切に掬い上げる姿勢ががっつり伝わってくるエッセイで、またお守りが1冊増えてほくほくしています。

 

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ではここからは印象に残った文章をいくつか紹介。

 

오래전의 여행을 꺼내어보니 얼마나 많은 것들을 당연히 여기고 누려왔는지 새삼스럽다. 쑥스럽지만 어떤 날, 우리가 함께 보냈던 짧은 낮과 길게 붙잡았던 밤이 나를 구했다고 C에게 꼭 이야기하고 싶다.

引用『지구인만큼 지구를 사랑할 순 없어』p292

(以下、私が意訳した文です)

(昔の旅行の思い出を引っ張りだしてみると、どれだけ多くのことを当然のことのように享受してきたのかを改めて感じる。私たちが一緒に過ごしたあの短い昼と長く握りしめていたあの夜に私は救われたのだと、気恥ずかしいけれど、いつの日か友人Cへ必ず話したいと思う。)

 

그날의 햇빛, 그 음악, 그 모든 웃음소리를 마음속에 소중한 풍경으로 품고 있다. 풍경은 때로 지향점이 되고, 내가 사랑하는 사람들이 그렇게 열린 광장에서 안전하게 스스로일 수 있는 날은 여기에도올 것이다. 그것을 믿는다.

引用『지구인만큼 지구를 사랑할 순 없어』p163

(以下、私が意訳した文です)

(あの日の日差し、音楽、笑い声、その全てを大切な風景として心に刻んでいる。風景は時に目指すべき場所となる。愛する人たちが、そうやって開かれた広場で、安全に自分らしくいられるようになる日はここにもくるはずだ。私はそう信じている。)

 

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어쨌건 좋아하는 것을 열렬히 좋아하는 편이고, 새로 좋아할 만한 것을 만날 준비가 항상 되어 있기도 해서 살아가는 데 큰 힘이 되는 것 같다. 뭔가 힘든 일을 만나 마음이 꺾였을 때 좋아할 만한 대상을 찾으려고 하면 이미 늦은 감이 있다. 괜찮은 날들에 잔뜩 만들어두고 나쁜 날들에 꺼내 쓰는 쪽이 낫지 않나 한다.

引用『지구인만큼 지구를 사랑할 순 없어』P41

 (以下、私が意訳した文です)

(いずれにせよ、私は好きなものをとことん愛する方だし、常に新しい好きなものに出会う準備ができている。それが生きていくのに大きな力になっているのだと思う。好きな対象を探すのは、何か大変なことが起きて心が折れてしまってからでは遅い。それまでにたくさん好きなもの作っておき、大変な日にそれらを取り出す。そのほうがいいんじゃないかと思う。)

 

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여자들의 삶에 대해 자주 생각한다. 세계 곳곳의 여자들의 삶에 대해, 여자 이름으로 된 제목의 소설들을 많이 쓴 것은 그래서인것 같다.

引用『지구인만큼 지구를 사랑할 순 없어』P227

 (以下、私が意訳した文です)

(女性たちの人生について頻繁に考える。世界各地の女性たちの人生について。私が書いた小説に女性の名前のタイトルが多いのもそのためだと思う。)

 

뮤지컬을 보고 나서 더더욱 자주 로알드 달의 말을 떠올린다. ˝친절함이야말로 인류의 가장 큰 특징이 아닐까 한다. 용기나 대담함이나 너그러움이나 다른 무엇보다도 친절함이 말이다. 당신이 친절한 사람이라면, 그걸로 됐다.˝

引用『지구인만큼 지구를 사랑할 순 없어』p382

 (以下、私が意訳した文です)

(ミュージカルを見た後、ロアルド・ダールの言葉を今まで以上に思い出すようになった。”親切さこそ人類の最大の特徴ではないかと思う。勇気や大胆さ、寛大さなど他のどんなことよりもだ。あなたが親切な人なら、それでいいのだ”)

 

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지금이 그리 좋지 않은 시대라는 걸 인정하면서도 어디선가 다정한 대화들이 계속되고 있길 바라는 마음만큼은 버릴 수가 없다

引用『지구인만큼 지구를 사랑할 순 없어』p47

 (以下、私が意訳した文です)

(今がそんなにいい時代じゃないことはわかっている。それでもどこかで温かみのある会話が続けられているのを願う気持ちだけは捨てられない。)

 

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세상이 망가지는 속도가 무서워도, 고치려는 사람들 역시 쉬지 않는다는 걸 잊지 않으려 한다.절망이 언제나 가장 쉬운 감정인 듯싶어, 책임감 있는 성인에게 어울리진 않는다고 판단했다. 작은 부분에서 시작된 변화가 확산되는 것은 인류역사에서 흔히 찾을 수 있는 패턴이기 때문에 시선을 멀리 던진다.

引用『지구인만큼 지구를 사랑할 순 없어』p254

 (以下、私が意訳した文です)

(世界が壊れていくスピードに恐怖を感じるけれど、それと同時に絶えず立て直そうとする人がいる事実も忘れないようにしたい。絶望はいつも一番安易な感情で、責任感のある大人には相応しくない感情だと思った。小さいところで起きた変化が広がっていく様子は、人類の歴史上よく見られるパターンだ。だから私は視線を遠くに置いている。)

 


★★★

世の中醜悪なことばかりですぐに絶望してしまうけれど、セランさんの本を読むと「世の中を立て直そうとしている人たちや、周りの大切な人たちにもっと目を向けよう」「絶望してばかりいられないな...」という気持ちがむくっと湧いてくるというか。

横のつながりで起こす小さなうねりの可能性、ひとりひとりの人生が少しずつ重なり合うときに生まれる力に期待したくなるというか。

ポジティブになるといったら言い過ぎだけど、無気力や絶望に傾いた目盛りを少しばかり希望側に寄せられるような感覚になります。

 

国境の行き来が制限され、離れたところへ思いを馳せる機会が減りがちな時期だからこそたくさん読まれてほしい1冊だなあとも思いました。

この本読んで海の向こうにいる友人たちに猛烈に会いたくなったし(それでなくても会いたいの限界なのに)、セランさんが書いておられた友人達との楽しかった記憶が今の自分を支えてるっていうのには大共感で。

いつか海の向こうにいる友人や、国内にいるけど様々な事情で会えていない友人たちに会ったら「コロナ禍で会えなかった間、あなたとの楽しい思い出に何度も救われた」と伝えたい。

 

いやあ、小説だけでなくエッセイも最高によかった。やはり믿고 읽는 작가님です。

早く邦訳版も出てほしいし、これからもセランさんにはどんどんエッセイを書いてもらいたい!