2022 1〜6月 読んでよかった日本と韓国の本

 

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こんにちは、そみ(@somi_koguma) です。

今回は2022年1月〜6月までの読書記録です。

 

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年年歳歳 ファン・ジョンウン著、斎藤真理子訳

 

ファン・ジョンウンさんの作品はどれも独特の静寂、重さが漂っていて、物語にどっぷり浸れるまとまった時間が必要だったりする。今回も心が落ち着いているタイミングで、集中して一気に読み切った。

本作も『ディディの傘』と重なるところも所々あって、著者が描く時代による抑圧や痛みの物語にはやるせなさも強く感じるけど、同時に時代の記憶を次世代へとつないでいく責任もひしひしと感じた。

 

最近コーヒータイムのお供にしているポッドキャストもとてもよきなので、韓国語わかる方はぜひ。

www.podbbang.com

 

僕の狂ったフェミ彼女 ミン・ジヒョン著 加藤慧訳

 

うっすら女性蔑視(本人に悪意がないものも含めて)がインストールされてる人の描写が絶妙で、見覚えあるあるの連続だった小説。

 

タイトルだけだと一見フェミニズムを批判している内容かと思ってしまうし、文体などもライトでするする読めるから、他のフェミニズム小説と比べると普段リーチしない層にまで広まるんじゃないかなと思った。普段からフェミニズムや差別問題に鈍感だったり嫌悪感を抱いてる人にとっては、読みようによっては男性側気の毒...やっぱりフェミニズムは狂ってるな....で終わって、作者が作中で訴えてることを全く汲み取れないまま本を閉じるかもしれない。

 

頑なに耳を塞ぎ学ぼうとすらしない人よりも、わからなさや居心地の悪さをきっかけに学びを始められる人たちに多く読まれたらいいなと思う。

 

「僕の狂ったフェミ彼女」著者&訳者インタビュー フェミニズムは誰かを排除するためのものではない|好書好日の中で筆者も訳者もトランス差別にはっきり反対を表明していたのも安心できた。

 

母親になって後悔してる オルナ・ドーナト著 鹿田昌美訳

 

自分の人生にとって何が価値があって大切か。それを計算し、選択肢を比較検討することが主体であると気づけば、母は母親であることについて選択肢を検討せず評価をしないという社会的期待の意味するところが理解できる。言い換えれば、後悔を恐ろしい合理性とみなす社会的反応は、母が自身の見解や経験、そして親密な関係との結びつきを維持する権利を剥奪されていることを示している。彼女たちは、母としての現状や人生を評価するために、1分たりとも立ち止まることができない。なぜなら、母が他者のために存在する客体であることに依存する社会にとって、彼女たちがそこに留まらないことは、あまりにも恐ろしいことだからである。

P286

 

まとまらない言葉を生きる 荒井祐樹著

 

白黒つけたりカテゴリ分けして複雑なものを単純化しようとする風潮が強くなってきている。耳ざわりさえよければいいのかと思うことも度々ある。

特に人の尊厳に関することを、大衆の想像力の範囲内に収まるようわかりやすく都合よくまとめられていくのは本当に恐怖でしかないし、それを権力者たちが平然と行ってる光景に毎日嫌気がさしている。

 

わかりにくいこと、曖昧なグレーな部分が許されない社会は誰にとっても息が詰まるはずなのに。

 

私自身、瞬発力もないしわかりやすく簡潔に話すことも苦手で、それを幼い頃から弱みだと思っていたけれど、ゆっくり思考して、保留して、ぽつりぽつりと言葉を出すことも抵抗のひとつになるのかもしれないなとこの本を読んで思った。

最近読んだ中で一番付箋を貼った本かもしれない。

 

誰かの理想を生きられはしない とり残された者のためのトランスジェンダー史 吉野靫著

 

全てのトランスジェンダーが逆の性別を望んでいるのではなく、Xジェンダーやノンバイナリーを自認する人もいること。医療、法制度などによって模範的な当事者像が作り出されてる背景があること。

男か女かわからない人、どちらでもない人など、多様な性の存在に社会が慣れていくこと。相手の名乗りを(根拠を示せと言わずに)まず尊重すること。

 

新たに知ったこと誤解していたことなど、学びと反省の多い1冊だった。

誰かを抑圧することで成り立つ社会で生きたくないし、無自覚に差別に加担してしまうことをひとつでも減らしたい。まだまだ勉強不足だから、これからも学びを進めていきたい。

 

사랑한다고 말할 용기 황선우 

 

フリーランスでやってる仕事のこと、同居人キム・ハナさんや愛猫との暮らしエピソード、運動や趣味の話、老いていくことについてなどなど。生活と仕事のバランスをとりながら、可能な限り長く健やかに生きるための試行錯誤が綴られたエッセイ。

ファン・ソヌさんの文章を読むといつも、歳を重ねていくことへの不安が少し和らぐ。

もちろん社会が安心して暮らせる状態であることが大前提ではあるけれど、20代よりも30代、30代よりも40代と日々の楽しさをどんどん記録更新していく人の姿はとても眩しいし憧れる。

私も信頼できる人達と喜びを分かち合いながら老いていきたいなあ。