こんにちは、そみ(@somi_koguma) です。
最近、読み終わるのが嫌なくらいドタイプの韓国エッセイに久しぶりに出会いまして。
それが今回紹介する『平日も人生だから - 週末ばかりを待たない人生のために』 という2019年の春に刊行された韓国エッセイ。
多様なお話が詰まったエッセイなので一言で説明するのは難しいのですが、平日がはやく過ぎ去ること願ってしまう現代人が忘れがちなこと、見逃しがちなことが書かれたエッセイで、誰もが日常の中で感じる焦燥感、不安、恥を丸ごと包みこんでくれるような内容でした。
このエッセイは、大好きな小説家、チョン・セランさんが推薦文を書いておられたという理由で購入したのですが、ページをめくるたび、著者の繊細な感性と文章のうまさとユーモアに感嘆しまくり。
韓国語を勉強しはじめてからたぶん40冊ほど韓国エッセイを読んできたんですが、その中でもナンバーワンのエッセイでした。
いくら好きなエッセイでも、読み終わってまたすぐに2周目に突入することは少ないんですが、このエッセイは軽く2周しちゃいましたね....。
著者と自分の性格や感覚が似ているのも大きな理由だと思いますが、何度も何度も読みたくなるエッセイは久しぶりに出会いました。
ということで今回も、エッセイの内容を少し紹介し、印象にのこった部分も数カ所ピックアップしていきたいと思います。
※今回紹介するのは韓国語で書かれた本です。
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『平日も人生だから - 週末ばかりを待たない人生のために』
『평일도 인생이니까 ー주말만 기다리지 않는 삶을 위해 平日も人生だから - 週末ばかりを待たない人生のために』
はじめタイトルを見た瞬間、ドキッとしました。
というのも、普段から「ああ、早く休みの日になってのんびりしたい」「今日も仕事かあ、時間がはやく過ぎてほしい」と思うのが癖になってしまっているし、特にコロナ禍以降の生活は、この閉塞感のある日々がはやく過ぎて、また気軽に旅ができる日常に戻ってほしいと、今ではなく未来を常に見る癖がひどくなっちゃってまして。
今、この瞬間を大切にしなきゃと頭ではわかっていても、焦燥感はなかなかなくなりません。
だから暴走しそうになったときに減速させてくれる何かが必要なのですが、このエッセイはまさにそういうときにぴったりの1冊でした。
このエッセイは1章『내 마음에 드는 인생(自分好みの人生)』2章『평일도 인생이니까(平日も人生だから)』、3章 『 두 번 해도 좋을 것들(2度してもいいこと) 』4章『잘 외로워지는 연습(うまく孤独になる練習)』の全4章からなっています。
1章『내 마음에 드는 인생(自分好みの人生)』には、自分の人生は周りより劣った人生だと思ってしまう人のためのお話が、2章『평일도 인생이니까(平日も人生だから)』と3章 『 두 번 해도 좋을 것들(2度してもいいこと) 』には焦燥感から小さな幸せを見逃してしまう人のためのお話が書かれていました。
そして4章『잘 외로워지는 연습(うまく孤独になる練習)』には、様々な痛み、事情を抱えた自分や他者を包み込むお話が書かれていました。
どのお話も、著者が実際に経験したことを元に書かれているのですが、キム・シンジさん文章がうますぎるんですよね。(作家さんだから当たり前ですが)
なんというか、こう、人が日常生活で感じる、現実の酸っぱさと未来への小さな期待を無害なユーモアを混ぜてひとつの話にまとめるのが、うますぎる。ひとつのエピソードの中に喜怒哀楽が全て入っていて、すごく人間らしい。ユーモアのセンスも高くて、時折、ぷはっと息が漏れちゃったり。
この作家さんは、弱みも情けなさも抱えたまま、自身の内面を丁寧に埋めていこうと努力する人なんだと、文からひしひしと伝わってきました。
このエッセイの特徴は、読み進めるうちに心に溜まったストレスがじわじわ緩まっていくということ。
エピソードの前半を読むときは「めっちゃわかる。人生、ほんっとうまくいかないよねえ」と嘆いちゃうけど、後半を読むころには不思議と「まあ、そういうこともあるさ」とおおらかな気持ちになってるんですよね。
それがすごく心地いい。
読むまえはイライラしたり焦ったりしていたのに、数ページ読んでるうちに気づけばのんびりした気持ちになってる。
ストレス度をガクンと下げてくれる、魔法のようなエッセイでした。
また、新しいお話に入る前にそのエピソードのメインとなる一文がピックアップされていたのが印象的でした。
「これからどんな話が始まるのかな?」「ん?これはどういう意味だろう?」と読む前に読者の想像力を掻き立てる工夫がされていてよかったです。
著者のキム・シンジさんは自身をこのように紹介しています。
『頑張り過ぎない人生を考える人。』
『これくらいでOKだろう、そういうこともあるさ。自分自身にも他人にもこういった言葉をかけようと努力している。』
ああ、すてき。
自分が何を成し遂げたか、どれだけすごい人かを証明するためではない、何を考えて生きているのか、何を大切にしているのかを書いた肩書き。いいですね。
무난한 재능으로도 하고 싶은 일을 계속 해 나가는 방법을 , 주말만 기다리는 대신 고단함 속에서도 즐거움을 찾는 방법을 , 덜 애쓰고 더 만족하는 하루를 사는 방법을 조금씩 익혀 가고 있다.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p8
以下、私が意訳した文です。
(平凡な才能でもしたいことを続けていく方法を、週末だけを待つかわりに、日々の気怠さの中での楽しみを見つける方法を、頑張り過ぎず少しでも満足のいく1日を送る方法を少しずつ身につけていっている。)
사는 일이 어려워 누구라도 붙잡고 얘기 나누고 싶은데 그럴 수 없을 때마다 글을 썼다.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p9
以下、私が意訳した文です。
(生きづらいとき、誰でもいいから掴まえて語りたくなる。でもそれができないとき、代わりに文章を書いた。)
ということで後半は、印象に残った文をピックアップしたいなと。
すきなことを口に出して生きる
무언가를 계속 좋아한다고 말하면, 삶이 점점 그리로 가까워진다는 것. 이 집에 두번째로 방문한 친구는 테라스를 보더니 한마디 감탄을 내뱉었다. '역시 말이 씨가 된다니까! "
中略
좋은 것들에 대한, 좋아하는 것들에 대한 말을 많이 해야지. 그 말들이 내 곁에 뿌리를 내리고 살게 될 때까지. 말은 씨가 된다니까, 언젠가 싹 틔우게 될 말을 아주 많이 해 버려야겠다.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p136
以下、私が意訳した文です。
(好きなことを好きだと言い続けていれば、人生が少しずつそちらへ近づいていく。この(引っ越した)家に2番目に訪問した友達は、うちのテラスを見て感嘆の一言を言い放った。”やっぱり言葉は現実になるんだって!”)
(良いことや好きなことについてたくさん話さなきゃ。その言葉が私のそばに根をおろしてくれるまで。言葉は現実になるそうだから。いつか芽を出すまで、好きなことに関することをたくさん口にするぞ。)
요즘 내게 중요한 것은 이런 것이다. 많은 책을 읽는 것보다 이미 읽은 책을 한 번 더 읽는 시간. 여러 곳에 가는 것보다 한 장소에 제대로 머무는 일.
中略
한 끼를 때우기 위해 밥을 물에 말아 급하게 넘기는 게 아니라 , 한 숟갈을 제대로 뜨고 천천히 꼭꼭 씹어 삼키는 식사.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p159
以下、私が意訳した文です。
(最近私にとって重要なのは、たくさんの本を読むよりすでに読んだ本をもう一度読む時間や、いろんな場所に行くよりひとつの場所にちゃんと留まることだ。)
(食事を適当に済ますためにご飯に水を入れ、急いでかきこむのではなく、ひとさじひとさじ丁寧にすくい、しっかり噛んで飲み込む食事を。)
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平日も人生だから 半径5メートルの世界に目を向ける
출・퇴근하며 입버릇처럼 "빨리 토요일 되면 좋겠다"라고 하는 순간 평일은 인생에서 지워지는 것처럼.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p96-97
以下、私が意訳した文です。
(出勤・退勤のとき、口癖のように”はやく土曜日になったらいいな”と言った瞬間、平日は人生から消えてしまうように。)
Today is better than tomorrow. 치앙마이의 어느 사원을 걷다 이런 문장을 만난 적 있다.
中略
그건 내일은 오늘보다 좋지 않을 거라는 뜻이 아니라, 내일을 기다리는 대신 오늘을 살라는 말이었다.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p102
以下、私が意訳した文です。
(Today is better than tomorrow. チェンマイのある寺院を歩いているときにこんな文章に出会った。)
(それは、明日は今日よりも良くない日になるだろうという意味ではなく、明日を待ち遠しく思う代わりに今日を生きろという言葉だった。)
가지 않은 길을 생각하고 어디 먼 데를 바라보는 대신 내 발밑을, 나를 둘러싼 반경 5미터 안의 세계를 좀 더 자세히 들여다보는 사람이고 싶다.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p98
以下、私が意訳した文です。
(進まなかった道を想像し、どこか遠いところを見つめる代わりに、私の足元を、私の半径5メートルの中の世界に目を凝らす人でありたい。)
後悔と失敗が私たちを私たちにする
지나간 시절이란 건, 밤새 쓴 편지 같은 것이다. 분명 당시엔 온 마음을 다해서 써 내려간, 내가 표현할 수 있는 최선의 단어들만 골라 쓴 편지였는데도 다음 날 보면 볼이 확확 달아오라 찢어 버리고 싶어지는.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p216
以下、私が意訳した文です。
(過ぎ去った過去というのは、夜通し書いた手紙のようなものだ。そのときは全身全霊で自分が表現できる単語を選び、最善を尽くして書いた手紙だったのに、翌日読むと恥ずかしさがこみ上げ、破ってしまいたくなるような。)
어떻게 보면 지금의 우리는 후회로 빚어진 인간들이다.그 모든 실수와 후회들이 우리를 우리이게 했다.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p212
以下、私が意訳した文です。
(見方を変えれば、今の私たちは後悔によって作られた人間なのだ。全ての失敗と後悔が私たちを作ったのだ。)
인생은 같은 트랙을 달려 결승점 리본을 누가 먼저 끊고 들어가느냐의 문제가 아닌데. 각자의 길을 걸으면서 그 길에서 무얼 겪고 보았는냐가 자기만의 인생을 만드는건데.
우리는 결국 모두, 다른 곳에 도착하게 될 것이다.
引用:『평일도 인생이니까』김신지 p243
以下、私が意訳した文です。
(人生は同じトラックを走り、ゴールテープを誰が最初に切るのかが問題ではないのに。各自の道を進みながら、その道で何を経験し、何を見たのかが自分の人生を作るのに。)
(私たちはみんな結局、違う所に到着するだろう。)
★★★
ということで今回は韓国エッセイ『平日も人生だから - 週末ばかりを待たない人生のために』の紹介でした。
この本の文章をまるまる紹介したいくらい良い内容なので、ピックアップするのが難しかったです。
エピソードの一部分だけ抜粋したので、この本の魅力が伝わりづらいかもしれませんが...
どのエピソードも深く考えさせられるものばかりでして、気づけば手元の読書メモ帳5ページくらい、ぎっしりメモで埋まっちゃってました。
また以前Twitterにも書いていたんですが、この本を中心に私が尊敬する作家さん3人がつながっていて、好きの連鎖に口角が上がりっぱなし。
チョン・セランさんおすすめのエッセイを読んでいたら、偶然大好きなエッセイ『無理のない範囲で』の引用文を見つけて嬉しくなった。
— 𝑠𝑜𝑚𝑖 🌿 (@somi_koguma) 2020年9月23日
手元にあるエッセイ、3人の著者がつながっている...! pic.twitter.com/4hefespaIi
今度はキム・シンジさんのおすすめの本を読んで、また好きの枝を四方八方に伸ばしたいなと。
何気ない日常や人生についてのエッセイがお好きな方にはめちゃくちゃめちゃくちゃおすすめの1冊です。(みんなお願いだから読んで...)
もし、読んだよーっという方がいらっしゃったら是非教えてください。皆さんの心に残った文章も気になります。
ではっ!
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